昭和の化石の英語教室

昭和の終わりに日本を離れたラッキーな老人の英語教室

初級英語(16):「母音のリダクション」について その2("can" の発音)

先日説明いたしましたように、複数の音節からなる英単語では、ストレスのない音節の母音は大体「シュワ」/ə/ (曖昧母音)になります(人によっては /ɪ/ みたいになることもありますが、聞いた感じはほとんど差はありません)。

この現象は「母音のリダクション」と呼ばれ、自然でわかりやすい発音にする重要な要素です。これによって発音のメリハリが形成され、聞き取りやすくなります。例:

"na.tion.al.ist" (最初の音節 "na" にストレス) /.ʃ(ə)n.əl.əst/

(上で右端の点々三つをクッリクすると、再生スピードを変更できます。)

「母音のリダクション」は文章の中でも発生します。例えば "can" の発音です。この単語は、本来、 /kæn/ と発音されます。

しかし実際の会話では、"can" にストレスがない限り /kən/ と発音されます。例:

"Can I have a hamburger, fries, and a coke." /kən.aɪ.../

"How can I help you." /haʊ.kən.aɪ.../

 

最後になりましたが、"can" を /kən/ と発音するということは「アメリカ式発音」では、非常に重要です。というのは、「アメリカ式発音」発音では、"can't" の "t" は落ちてしまって、/kæn?/ ("?" = "glottal stop" 注) と発音するので、"can" と区別できなくなるからです。

注:"glottal stop" とは、声帯を急速に閉じることによって生じる停止音のことです。日本語で「ハッ」と掛け声をかける時の最後の停止音です。「アメリカ式発音」では、単語の最後の "t" は、大抵 "glottal stop" になります(つまり聞こえません)。例:"won't" "don't" etc

例えばあなたが "I can do it." と言いたい時、/kæn/ と発音してしまうと、アメリカ人には、あなたが "I can't do it" と言ったように聞こえて、困惑してしまいます(笑)。