昭和の化石の英語教室

昭和の終わりに日本を離れたラッキーな老人の英語教室

「早期英語教育」は役に立つのか。

ご存知かもしれませんが、中国の「教育ママ」は日本の比ではなく、「虎ママ」と呼ばれ恐れられています。うちのカミさん(中国人)は、ここ中国・武漢で子供たち(小・中学生)に1対1で英語を教えていて、「虎ママ」の扱いには比較的慣れています。慣れていないと、咬み殺されます(笑)。

 

中国の「虎ママ」

ここ武漢の学校では、英語は小学校3年生から始めます。ですが、うちの生徒さんの中には、3歳頃から英語を習っている子が結構います。ここ10年程、こういった「早期英語教育」を受けた子供たちをみてきたわけですが、気づいたことが一つあります。

小学校の3−4年までは、この子達の英語の成績は当然いいのですが、小学校高学年から中学生頃になると、3年生から普通に始めた子とそんなに変わらなくなる、ということです。私には、この現象はちょっと不思議でした。そこで「早期英語教育」のメリットについて、私なりに調べてみました。ブログで誰かが書いているようなものでなく、文献を当たってみました(昔取った杵柄です、笑)。

まず分かったことは、英語を母国語としない者、例えば日本人が、英語を習う環境が二つあるということです。一つは、英語圏(例えばアメリカ国内)で「第二言語」として習う環境(いわゆる ESL, English as Second Language)、もう一つは、非英語圏(例えば日本国内)で「外国語」として英語をならう環境です(EFL, English as Foreign Language)。

大妻女子大学英語教育研究所の服部孝彦教授は、「第二言語環境」と「外国語環境」の違いについて、次のように述べられています。

第二言語環境においては,早期英語教育の効果は期待できるが,外国語環境では,早期英語教育が効果的であるという研究結果は得られていない。外国語環境では,インプットの量があまりにも少なすぎるので,音声面でさえも早期英語教育の効果はほとんどないと考えられる。日本という外国語環境での早期英語教育の技能面での効果は,残念ながらあまり期待できないといえる。

(参考文献:早期英語教育と臨界期に関する研究

服部教授のおっしゃることは、私たちが見てきたことと合致しています。幼稚園から英語をならってきた子は、確かに英語に慣れていますが、親御さんが思っているほどには慣れていません。ネイティブの同じ年頃の子供たちとは、格段に違います。まず、まともな文章がほとんど喋れません。小学生になっても、ほぼ単語の羅列です。最初のうちはこれでも問題ではないんですが、高学年になると、問題になってきます。

「早期英語教育」を宣伝しているところはたくさん有りますが、本当に役に立つのでしょうか。私は専門家ではないので、わかりません。しかし、「絶対に役に立つ」との証拠はどうもまだないようです。