昭和の化石の英語教室

昭和の終わりに日本を離れたラッキーな老人の英語教室

「成功者」の話を鵜呑みにしてはいけない。

私たちは皆、「無意識な思い込み」のせいで、時々間違った判断をしてしまいます。こうした「無意識な思い込み」のことを心理学では「認知バイアス」(cognitive bias; 「バイアス」=偏り)と呼ぶそうです。

 

例えば、私たちが何かを強く信じているとします(例:トランプはひどいやつだ!)。この場合、その信念を支持する情報(トランプはこんな酷いことをした)は無条件に信じる一方、それを支持しない情報(トランプはこんな良いことをした)は無視する、となります。「確証バイアス」(confirmation bias)と呼ばれ、誰にでも無意識におこります。

 

そうした「認知バイアス」の一つに、「生存者バイアス」(survivorship bias)と言われるものがあります。「生存者バイアス」とは、競争に生き残った人「だけ」を基準にして考え、そのせいで間違った判断をしてしまうことです。

 

私たちは皆、「偶然」より「必然」が好きで、誰かが生き残ったのには、特別の理由があったはずと思いがちです。「偶然」の要素の貢献は、思考回路から無意識に消えてしまいます。例えば、Bill Gates の成功について考えるとき、「偶然」が彼の成功にどれだけ貢献したのかは、普通興味もないし、考えません。私自身がそうです。無意識のうちに、彼の成功は「必然」であり、その秘密を知りたいと思います。実際には、Bill Gates と同じ、あるいはそれ以上の才能があり、同じような努力をしたのに、「運悪く」成功しなかった人もたくさんいるはずです。そう言った人のデータは無視します。これが、「生存者バイアス」です(他にも例はたくさんあります。詳しくはご自身でお調べください)。

 

「生存者バイアス」は、「生存者」自身に、特に非常に強く存在します。社会で成功した人は、「おれの成功は、大部分が運のせいだ」と思っている人は、まずいないでしょう。講演会などで、「私の成功は••さんとか運のおかげ」と言っている人はたまにいるでしょうが、本気でそう思っているかは、怪しいもんです。あなたの研究室の先生が、ノーベル賞をもらっても、あなたが賞金のお裾分けをもらえることは、まずあり得ません。その代わり「お祝いパーティ」でお金を踏んだくられることは、十分あり得ます。

 

「成功の秘策」といった類の本を書いていたとしたら、なおさらです。人間は自己評価が苦手です。自分の苦労・努力は過大評価してしまいます。だから、もし大学院生の方がこれを読んでいたとしたら、「大学教授」(競争の「生存者」)の言うこと「だけ」を聞いていると「ドツボ」にハマるかもしれません。彼らが、なぜ成功したのかを、彼ら自身がおそらく勘違いしているからです。