初級英語(7):アメリカ式発音にはほぼ存在しない「お」の音、その2
「お」の話の続きです(赤の点線で囲ったところ)。
上の図で赤で囲ったところの /ɒ/ を見てください。すぐ近くに /ɑ/ があるのがわかると思います。両者の違いは唇の形です。
実験してみましょう。
1)まず(日本語にはない)/ɒ/ の音を探します。「おー」と言いながら、徐々に顎を思いっきり下に開けてください。それが /ɒ/ です。この段階で、唇は「お」の形、つまり丸くなっていることに注意してください。
2)では、/ɒ/ と言いながら、唇を開けてください。それが /ɑ/ です。あくびするときの「あ」です。
この実験でお分かりのように、/ɑ/ と /ɒ/ の違いは微妙です。で実際、アメリカ人の約半分は、両者を全く区別しません。言語学では、"cot-caught merger (合併、混同)" と呼ばれる現象です。
"cot" "caught" ともに /kɑ:t/ (←クリック) と発音されます。この時の母音は "father" の母音と同じ音になります。
この現象が起きる地方は大体決まっていて、アメリカの西部から北部の方です。カナダもそうなります。こういった地域では、例えば "hot dog" の二つの "o" が同じ音になって、日本人の耳には多分、「ハーダー」に聞こえるでしょう。私の住んでいたニューヨークでは、"hot" と "dog" は違う母音になります(「ハードー」に聞こえる)。
ミシガンの人が "daughter" というと、「ダーダー」に聞こえます(最初の頃、私は何が「ダーダー」なのかわかりませんでした、笑)。ちなみに、ボストンには、/ɔ/ の音が存在します(アメリカの他の地域にこの音はありません)。「お」の音は、本当に、ややこしいですね。専門家・辞書によって意見が違うのもわかる気がします。