昭和の化石の英語教室

昭和の終わりに日本を離れたラッキーな老人の英語教室

アメリカ人には、「すごい!箸が使えるんですか!」とのお世辞は言わない方がいい。

私は、日本・中国に住んでいる(た)アメリカ人とよく話をします。立場は逆ですが、私自身もアメリカに「外国人」として長く住んでいたので、彼らの気持ちがよく理解できるからです。

 

私たちのように、よその国に住む外国人("expat" と呼びます)は、今自分の住んでいる国の「悪口」が大好きです。仲間内で集まると、こうした悪口でずいぶん盛り上がります(笑)。あらかじめ誤解されないように言っておきますが、これは単なるストレス発散であって、本当にその国が大嫌いだと言うわけではありません。大嫌いなら、とっくに出て行ってますし、実際出て行った人もたくさんいます。

 

さて、日本に住むアメリカ人がよく文句を言うことの一つに、日本人のよく言う「すごい、箸が使える!」があります。大体こんな感じです:「俺はもう15年も日本に住んでいるのに、いまだに、わー箸が使えるんだ、すごい!と言われる。」

 

彼らは、この「箸のお世辞」を一種の「差別」として受け取ります。このお世辞は、彼らが日本人でないから、浴びせられる言葉だからです。彼らは、どんなに長い間日本に住んでも、仮にもし日本国民になったとしても、「本当の」日本人だと思ってもらえないと、そう思い知らされるのです。日本人と自分たちの間の乗り越えられない「壁」みたいなものを、箸のお世辞に感じているのです。

 

それでも、彼らは、お世辞をいった本人には決して文句は言いません。理解してもらえないし、「被害妄想」だと思われるのが関の山だからです。気持ちは、非常によくわかります。

 

私は大人になってからの人生の大部分をアメリカで過ごし、アメリカの文化・習慣はよく知っているつもりです。それでも、アメリカ人から日本人「観光客」のように扱われることが結構ありました。「アメリカでは、こうするんだよ」という類の話です(私は当然そのことは知っています)。こうしたアメリカ人は、全く何も悪気はありません。いわば親切で言っているつもりです。だから私も文句は決して言いません。「ありがとう」の一言です。

 

でもこんな時思います。「あー、俺は永久にアメリカ人には仲間だと思われない」のだと。この感じは、母国を離れたものにとって、実は結構こたえます。生きる場所がないように感じるからです。

 

日本に住んでいるアメリカ人は、ま、日本の文句は時々言うでしょうが(笑)、日本が本当に好きだからそこにいるわけです。少なくとも、大半はそうです。日本人の「仲間」に入れてもらいたいはずです。「壁」を感じたくないのです。