昭和の化石の英語教室

昭和の終わりに日本を離れたラッキーな老人の英語教室

英語を楽しく学べる方法。

そんな方法はありません。

「英語の映画・ドラマを見て、楽しみながら勉強する方法」の類はそこら中に宣伝しているので、試した人はたくさんいると思います。実は私もそうです。楽しみながら英語が勉強できるのなら、私のような怠け者には向いていると。

全く上達しませんでした。

こういう方法を宣伝している人によると、上達しなかったのは「私のせい」だそうです。「ちゃんと言われた通りに」やらなかったからだと。本当にそうでしょうか。まあ誰のせいであれ、「楽しみながら学ぶ」方法は失敗する、という事実は変わりません。そうでなければ、インターネット世代の日本人の英語力は、超飛躍的に伸びているはずです。

日本語と違って、中国語では「勉強」とは「イヤイヤながら・無理して(何かを)する」と言う意味です。まさにその通りで、「楽しみながらの勉強」とは本来 "oxymoron" (注) です。

(注)矛盾した言葉を並べること。例:「公然の秘密」「ゆっくり急げ」"awefully good" "bittersweet"

私の個人的な観察では、英語の発音が上達するのは、次の二つの能力の「いずれか」だけが必要です。両方はいりません。

  1. モノマネ能力
  2. 辛抱力(めんどくさくても、コツコツ物事ができる能力)

(1)モノマネ能力:実験してみてください。"girl" (←クリック) を聴いて、「まね」してみてください。これができる人は、モノマネ能力があります。ほとんどの日本人はできません。

(2)"girl" の発音には、四つの音素があり、そのうち三つが日本語に存在しません。だから難しいんです。「シュワ」と呼ばれる、いい加減な「あ」の音 (ə)、「R」の音、そして「暗いL」の音の三つです。でも、それぞれの音自体は、30分も練習すれば誰でもできます。がこれには、「辛抱力」が必要となります。

初級英語(8):英語でもっともよく使われる母音ー「シュワ」/ə/

初級英語(9):「巻き舌」で「R」の発音をするのはやめた方がいい

初級英語(12):「暗いL」の発音

問題は、この30分練習する「辛抱」のある人が、世の中にあまりいないということです。「映画を見る」のは辛抱力全くいらないし、「英会話教室」に通うのも、宿題さえなければ辛抱力は必要ないです(経済力は絶対です、笑)。"girl" の発音がちゃんとできる人と、一生できない人の「差」というのは、結局のところ、こんな些細なこと(30分の練習する辛抱力)なんだと思います。

 

初級英語(12):「暗いL」の発音

「L」の発音は日本人にとって難しくありません。舌先を上歯茎の裏につけて "la la la..." です。簡単です。

  • "la la la..." のついでに、"ta ta ta" "da da da" "na na na" と言ってみてください。子音の L/T/D/N の舌の位置は全部同じです。覚えておくといいです。

さて、「L」の発音には、"la la la..." のような、いわゆる「明るいL」(light L) と、もう一つ「暗いL」(dark L) とがあります。

  • 明るいL:単語の初め、"love" "light" など(←発音は単語をクリック)
  • 暗いL:単語の終わりや真ん中、"school" "milk"

「明るいL」は大抵の人が問題なく発音できますが、「暗いL」の音を出すのは練習が必要です。実は「暗いL」発音方法は、ネイティブの間でも微妙に違います。次のやり方は私の習った方法で、結構いい「暗いL」の音が出ます。

  1. まず、舌先を上歯茎の裏につけます。「明るいL」と同じ位置です。
  2. 舌をそのままくっつけておいて、日本語の「うー」を言ってみてください。なんか変な音が出ます。これが「暗いL」に少なくとも近い音です。口の後ろで「こもった感じ」の音が出ます。
  3. 口を丸め方を変えていくと、「音色」が変わります。あんまり開けると、首を絞めらているような音になってしまうので(笑)、ある程度口は丸めないといけません。自分で調整してください。

なれてくると、舌を歯茎にくっつけなくても、「暗いL」が出るようになります。多くのネイティブは、時と場合によっては(例えば次に "k" がくる時)このようにしています。でもこれは、「自然に」そうなるので、今特に練習する必要はありません。

最後に、この「暗いL」の音を使って、"school" "milk" の発音に挑戦してみましょう。きっとうまくいきます。

 

外国語は「耳」で覚えられる?

私は今、中国の武漢にいるんですが、日本語を勉強したい学生は結構いて、私は時々練習台として使われます。彼らの出身地にもよるんですが、「ら行」が「な行」になる人がいます。例えば、「さよな」が「さよな」になります。

ある日そんな子がうちのレストランに来て、日本語は結構上手だったんですが、例の「ら行」→「な行」変換は明らかでした。本人もこの間違いを知っていましたが、どうしても治らないとのことで、私がかり出された次第です。

私:「りんご」

彼女:「んご」

私:「いやいやそうじゃなくて、り・ん・ご」

彼女:「・ん・ご」

私:「えーと、よく聞いて、り・ん・ご」

彼女:「・ん・ご」

(このあと、二人で大笑い)

彼女の「耳」には、「り」と「に」がほとんど同じに聞こえるので、いくら私が「り・ん・ご」と繰り返しても、意味がないのです。しかし問題は彼女ではありません。私は日本語を外国語として習ったことがないので、非ネイティブの彼女の間違いを「どうやって」直すのか、全く知らないと言うことが問題なんです。

 

同じことが、日本人の英語学習者で起きているかもしれません。

"Chloroform"(クロロホルム)を聞いてみてください(単語をクリック)。あなたの「耳」には、最初の「ロ」は "L" で、二番目の「ロ」は "R" だと、聞こえましたか?

もし同じように聞こえたとして、このネイティブの発音を何百回か聞くと、違いが段々とわかってくると思いますか? 年齢とか個人差によると思いますが、私は大部分の日本人には、このやり方は、非常に効率が悪いと思います。特に「日本語の耳」が化石化している人では、絶望的だと思います。

 

もっと手っ取り早いのは、自分で "L" と "R" の「発音」の違いを、まず理屈で理解すること(舌の位置が全く違います)だと、私は思います。それを元にして、最初はゆっくりでもいいから "Chloroform" をちゃんと発音できるようになれば、必ず「聞き取り」も上達すると思います。

参照:初級英語(9):「巻き舌」で「R」の発音をするのはやめた方がいい。 - 昭和の化石の英語教室

 

初級英語(11):発音ー /n/ と /ŋ/ (ng) の違い

まず耳のテストです。次のそれぞれの音は、どっちが "king" /kɪŋ/ (キング、王) で、どっちが "kin" /kɪn/ (キン、親族) か分かりますか?

答えはこの記事の終わりに書いてあります。

キングの「グ」を期待していると、これは区別できません。「グ」の音は、いずれも出てきません。実は /ŋ/ (ng) と /n/ の区別、このようにはっきりと大袈裟に発音するとわかりますが、早口でしゃべられるとよくわかりません。

しかし心配には及びません。実は、/ŋ/ (ng) と /n/ の区別は、日本語にもあるからです。あなたの口は、この区別を既に知っています。

  • /n/「こんな・検定・問題」の「ん」:舌が上歯茎の後ろに当たります(「ん」の後で止めるとわかります)。
  • /ŋ/ (ng)「ケンカ・音楽」の「ん」:舌は後ろに引っ込んで、どこにも当たっていません。

/n/ の方法で(舌を上歯茎の後ろに当てて)、「ケンカ」って言ってみてください。不自然でしょう? /ŋ/ (ng) の方法で「問題」を言うのも、不可能ではありませんが、自然にはできません。

何でこうなるかというと、「こんな・検定・問題」では、「ん」の次の子音が「な・た・だ行」(n, t, d) だからです。これらの子音は全て「舌を上歯茎の後ろに当てて」発音するので、その前の「ん」はその位置で待機しているわけです。

「ケンカ・音楽」の「ん」の場合、次の子音は「か・が行」(k, g) です。これらの子音は、舌はどこにも当たらないので、「ん」の舌もどこにも当たらないと言うわけです。

 

このように、日本人の舌は既に /n/ /ŋ/ の違いを知っているので、それを英語に持っていくだけの話です。/n/ は舌が歯茎にくっつき(「こんな」の「ん」)、/ŋ/ はくっつきません(「ケンカ」の「ん」)。あとは単に、慣れの問題です。

 

  • テストの答え:1)king, 2)kin

 

なぜウルトラマンは「必殺技」を最初から使わなかったのか。

ウルトラマンの必殺技は「スペシウム光線」と呼ばれる、高エネルギーの電磁波のようなものでした。「ビー」と言う音と共に出るこの光線が当たると、大抵の怪獣は「イチコロ」でした。ところが、ウルトラマンはこの必殺技はなかなか出しませんでした。

怪獣との戦いが始まると、最初ウルトラマンは殴ったり、蹴ったり、投げ飛ばしたりします。こんな乱暴なことをされると、さすがに怪獣だって頭にきます。で、ウルトラマンはボコボコにされてしまいます。

ご存知のように、ウルトラマンは地球上で活動できる時間が限られていて、それが残り一分かそこらになると、胸のタイマーが「ピコーン」となり始めます。ボコボコにされたウルトラマンは「ピコーン」がなると、そこで初めて必殺技を出します。怪獣は粉々になってしまいます。ウルトラマンは「シュワッチ」の雄叫びをあげて空に飛んでいきます。

子供心に私はどうしても納得がいきませんでした。「なんでー、ウルトラマンは光線をはじめっから出さんのんならー」です(すいません、広島弁です)。この問題について、近所のガキどもの間で話し合ったことがありました。私たちが「親分」と呼んでいた年長の彼によると、さっさと怪獣が死んでしまえば、ウルトラマンは何にもすることがなくなって困るだろう、とのことでした。

今考えると、なかなかいいところをついています(当時の私たちは、番組の30分枠という概念は存在していませんでした)。とにかくそれ以来60年の間、なぜウルトラマンは「必殺技」を最初から使わなかったのか、という疑問は私の心のどこかに残っていました。

 

ところが最近になって、私と同じ疑問を持ち続けた方のブログを発見いたしました。柳田理科雄 先生のブログです。しかも、私と違って柳田先生は、ウルトラマンの三十九回の戦い全てを「科学的」に解析したのです!その結果がここです→

news.yahoo.co.jp

ここで先生の結論を述べるのは、あえて差し控えさせていただきます。興味のある方は、ぜひ、先生の研究結果をご覧ください。柳田先生、大変ありがとうございました。

 

 

 

初級英語(10):アメリカ式発音の「R」色の母音

「R色の母音」とは、"doctor" (←クリックして発音を聞いてください) の "or" とか "first" の "ir" に出てくる音です。このR色の母音はイギリス式発音では、実質上存在しません。

例えば "car" の発音を比べます。アメリカ式 /kɑr/、イギリス式 /kɑː/

つまり、R色の母音が発音できると、アメリカネイティブの発音にずっと近くなります。聞き取り能力も上昇するので、TOEICの点数も上がるでしょう。

まず前回説明した「R」の発音練習から始めます。リンク→

初級英語(9):「巻き舌」で「R」の発音をするのはやめた方がいい。

上の方法で、一日中「R..R..R..R..」を練習してください。「R」の音は舌のみで作るのですが、この舌の位置は日本語にはないので、どうしても口が覚えないといけません。奥さんや旦那さんが「頭がどうかした?」とモラハラをかけてきても、スルーして一週間練習します。

 

R色の母音の中では、/ɑr/ (あ+R) が最も簡単です。"car" /kɑr/ に挑戦します。日本語の「か」で初めて、練習した「R」をくっつけてください(「か+R」です)。「カー」にならないように気をつけて。簡単にできるはずです。

これができたら、同じ要領で、次の四つのR色の母音を練習します(い・う・え・お+R みたいな感じです)。

/ɪr/ mere /mɪr/ (発音は単語をクリック)

/ʊr/ tour /tʊr/

/ɛr/ fair /fɛr/

/ɔr/ core /kɔr/

最後に日本人が間違いやすい /ər/ を練習します (/ɜr/ /ɝ/ の記号を用いている辞書もあります)。最初の母音 /ə/ は「シュワ」と呼ばれる「曖昧母音」で、いい加減な「あ」みたいな音です。この母音は、日本語にはありません。ここを参照してください。→

初級英語(8):英語でもっともよく使われる母音ー「シュワ」/ə/

"fur" /fər/ (毛皮) - "far" /fɑr/ (遠い) にならないように

"bird" /bərd/ - "bard" /bɑrd/ (詩人) にならないように

 

 

 

 

中級英語(2):英作文ー "very" はなるべく使わない

"Very" は、形容詞・副詞の前に置かれ、強調の意味で使われます。

I saw a very large dog.

少なくとも英作文では、"very" はなるべく避けたほうが、文章は引き締まります。上の例では、"very large" を次のように、一つの形容詞で置き換えるようにします。

I saw a huge* dog.

* 或いは enormous, gigantic, gargantuan, monstrous, burly, etc, etc...

他の例では、

very bad → aweful, appalling...

very good → superb, outstanding...

very angry → furious, irate, livid...

very sad → desolate, dejected...

また、このように置き換えることで、文章は「引き締まる」だけでなく、より「深い意味」を伝えることができます。

例えば、"desolate" は「心が空っぽ」「ひとりぼっちで寂しい」と言う意味が伝わります(例:恋人と別れた時)。また、"dejected" は「非常にがっかりした」「希望の光が見えない」と言った感じの悲しみです(例えばリストラされた時)。このような深い意味は、"very sad" では伝えられません。

 

語彙を増やすのに一番手っ取り早い方法は、Thesaurus (シソーラス類義語辞典) を使うことです。例えば、ここ→

www.merriam-webster.com

上のサイトで "sad" を検索してみると、90個以上の似た意味の単語が出てきます。

一つ一つの単語をクリックしてみると、微妙に意味が違うことがわかります。こうやって、少しづつ語彙を増やしていきましょう。